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グルタミン

グルタミンとは

グルタミンは生体内で最も多く含まれる遊離アミノ酸で、体内のさまざまな組織でエネルギー源として利用されます。また母乳に多く含まれ、幼児の発育に重要なアミノ酸であると考えられています。特に浸襲時(外傷手術後など)、ストレス時、運動時は消耗しやすく、十分な補給が望ましいとされていることから、条件付必須アミノ酸と呼ばれることもあります。

化学構造

グルタミンの呈味特徴

グルタミンは、甘味と旨味が主な呈味であり呈味強度も比較的弱いため、食品に配合した際に呈味を調整しやすいアミノ酸です。

呈味閾値閾値(mg/dL)
グルタミン250

◆被験者
大学生25名(男性10名、女性15名)および、味覚感度の優れていることにより選定されたパネルのうちの30~50名

◆呈味の確認方法
感ぜられる味全体を10とした場合に、「甘い」「鹹い(塩味)」「酸っぱい」「苦い」「旨い」「その他の味」に10がどのような割合で感覚的に配分されるかを記録させた。

グルタミンの溶解度

グルタミンは水に溶けやすいアミノ酸ですが、水溶液中での安定性は低いため、飲料やゼリー飲料など水分の多い剤型には不向きです。

参考文献:江頭他. アミノ酸資料集2010年度版. 日本アミノ酸学会, 2010.

グルタミン、グルタミン酸、
グルタミン酸Naの違い

「グルタミン」と名の付く、アミノ酸はいくつかあり、グルタミン、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム(MSG:MonoSodium Glutamate)などが知られています。それぞれ構造は似ていますが、異なる特徴を持ちます。

  グルタミン(Gln) グルタミン酸(Glu) グルタミン酸ナトリウム(MSG)
化学構造
分子式 C5H10N2O3 C5H9NO4 C5H8NNaO4
分子量 146.14 147.13 169.11
ほとんど無味。若干の甘味、旨味がある。 酸味と旨味がある。 強い旨味がある。
概要
  • カラダに最も豊富に含まれるアミノ酸のひとつ。
  • 腸管のエネルギー源として利用され、腸管バリア機能を改善させる。(免疫力強化)
  • 筋タンパク質分解抑制効果がある。
  • アルコールの代謝を高める働きをもつことが報告されている。
  • 小麦や大豆に多く含まれているアミノ酸。
  • エネルギー源として最も利用され易いアミノ酸のひとつ。
  • 日本食の出汁の成分。様々な天然の食品に含まれている。
  • 運動時の疲労の回復を促進することが報告されている。
  • 旨味調味料として使用される。 グルタミン酸のままでは水に溶けにくいため、ナトリウムをつけて水に溶けやすくしたもの。

グルタミンは体内に豊富に存在する遊離アミノ酸(血漿)

グルタミンは、遊離した形で体内に最も多く存在するアミノ酸として知られています。
グルタミンは生体での利用性が高く、様々な臓器や組織で利用されるアミノ酸であるため、血液中のストックも多いと考えられます。


基準個体群全体の血漿中遊離アミノ酸濃度の基準範囲

参考文献:中山聡, 宮野博. 血漿中遊離アミノ酸濃度の基準範囲と試験法の標準化. ぶんせき. 2019, vol. 2019, no. 2, p. 58–66.

グルタミンは体内に豊富に存在する遊離アミノ酸(骨格筋)

骨格筋においてもグルタミンは遊離アミノ酸としては最も多くなります。
筋タンパク質を構成するアミノ酸では、BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)が多いですが、遊離アミノ酸ではグルタミンが最も多くなります。グルタミンはBCAAからも合成することができます。


骨格筋の遊離アミノ酸濃度

参考文献:Bergström et al. Intracellular free amino acid concentration in human muscle tissue. Journal of Applied Physiology. 1974, vol. 36, no. 6, p. 693–697.

グルタミンの機能

グルタミンは特に高度ストレス下で、

  • 筋タンパク質分解抑制作用
  • 免疫機能改善作用
  • 消化管機能の改善・保護作用
を発揮します。
これは、高度ストレス下では免疫細胞や消化管細胞でエネルギー源としてグルタミンの要求量が高まっているため、と考えられます。

グルタミンの腸管バリア機能改善

腸管上皮細胞のターンオーバーは早く、数日で新たな細胞に入れ替わります。グルタミンは腸管上皮細胞のエネルギー源となることで、細胞のターンオーバーを正常に維持し、小腸の機能を健全に保つことができます。その結果、腸管バリア機能が高まり、免疫力を維持・向上させます。

グルタミンによる腸管バリア機能低下抑制効果

インドメタシンのような物質により小腸の上皮細胞が傷害を受けると、小腸内からの物質の輸送がされやすくなり、有害な物質も吸収されやすくなってしまいます。この状態は腸管透過性が高い(=腸管バリア機能が低い)状態となります。グルタミンの経口摂取により、腸管透過性の上昇(腸管バリア機能の低下)が抑制されました。

試験方法:平均年齢25.5歳の健常者12名に対し、グルタミンを7g摂取させた後、30分後にインドメタシン75mgとグルタミン1gを同時摂取させ、その後、グルタミンを複数回に分け合計22g摂取させた。その間にさらにインドメタシン50mgと腸管透過性を確認する指標となる51Cr-EDTAを投与し、尿中の51Cr-EDTAを測定することで消化管透過性を測定。

小腸透過性

参考文献:Hond et al. Effect of glutamine on the intestinal permeability changes induced by indomethacin in humans. Alimentary Pharmacology & Therapeutics. 1999, vol. 13, no. 5, p. 679–685.

グルタミンの免疫強化効果

グルタミン強化経腸栄養剤の摂取により、感染症の発症率が低下します。

摂取期間中の感染症発生率

摂取期間中のグラム陰性菌感染率

試験方法:全身炎症性反応(SIRS)を起こした重病患者76名(18~85歳)に対し、グルタミン30.5g/Lを含む経腸栄養剤を28日間、1日あたり1~1.8L程度摂取させ、前向きランダム割付一重盲検多施設比較試験(グルタミン強化栄養剤摂取群、通常栄養剤摂取群)を実施。試験期間(28日間)における感染率等を測定。

参考文献:Conejero et al. Effect of a glutamine-enriched enteral diet on intestinal permeability and infectious morbidity at 28 days in critically ill patients with Systemic Inflammatory Response Syndrome. Nutrition. 2002, vol. 18, no. 9, p. 716–721.

グルタミンによる
運動後の免疫力改善

グルタミンの経口摂取により、運動後の感染症発症率が有意に低下し、免疫力が改善しました。

マラソン後の風邪罹患率低下

マラソン後の免疫能力改善

試験方法:大学生151名に対し、マラソン直後及び2時間後に各5gのグルタミンを経口摂取させ質問紙法により風邪感染の有無を調査、またT細胞免疫機能の指標であるCD4/CD8比を測定。

参考文献:Castell et al. The effects of oral glutamine supplementation on athletes after prolonged, exhaustive exercise. Nutrition. 1997, vol. 13, no. 7–8, p. 738–742.