多機能活力アミノ酸

アルギニン

アルギニンについて

  • 体内で合成できる非必須アミノ酸であるが、ストレス下などの特定条件下では体内の合成量が必要量に追いつかず、外部から摂取することが必要になる準必須アミノ酸とも呼ばれている。
  • N(窒素)を多く持つグアニジル基を持つことが特徴です。
  • 血管拡張、アンモニア解毒促進、免疫賦活、成長ホルモン分泌促進、コラーゲン合成促進など様々な機能を持つ多機能アミノ酸です。
化学構造

アルギニンの呈味特徴

アルギニンは苦味を中心とした独特の呈味を有するアミノ酸です。呈味を感じる閾値も他のアミノ酸と比較すると低く、低濃度でも呈味を感じやすいアミノ酸です。
また、塩基性のアミノ酸であるため、食品に使用する際にはクエン酸などでpHを調整することで使用しやすくなります。

呈味閾値閾値(mg/dL)
アルギニン10

◆被験者
大学生25名(男性10名、女性15名)および、味覚感度の優れていることにより選定されたパネルのうちの30~50名

◆呈味の確認方法
感ぜられる味全体を10とした場合に、「甘い」「鹹い(塩味)」「酸っぱい」「苦い」「旨い」「その他の味」に10がどのような割合で感覚的に配分されるかを記録させた。

参考文献: 二宮恒彦. アミノ酸の呈味に関する研究.
調理科学. 1968, vol. 1, no. 4, p. 185–197.

アルギニンの溶解度

アルギニンの溶解度は、0℃でも8%以上と高く、溶解性も悪くはないため、飲料などの水に溶解する用途でも使用しやすいアミノ酸です。

参考文献:江頭他. アミノ酸資料集2010年度版. 日本アミノ酸学会, 2010.

アルギニンの生理機能

アルギニンは、アミノ酸の中でも特に多様な機能を持つアミノ酸です。
一例を挙げると、血管拡張(血流改善)、成長ホルモン分泌刺激、免疫力強化、アンモニア解毒、創傷治癒(コラーゲン合成促進)、カフェインの覚醒効果持続効果、などがあり、この他にも多様な生理機能が報告されています。
これらの生理機能を活用することで、幅広い用途やコンセプトに使用できるアミノ酸です。

アルギニンの代謝と生理機能

アルギニンの生理機能は、アルギニンそのものが発揮する機能だけでなく、一酸化窒素(NO)などのアルギニンの代謝物を介した機能もあるため、多様な機能を有します。

血管拡張/血流改善効果

一酸化窒素(NO)は、血管平滑筋を弛緩させることで、血管を拡張させる作用を有します。アルギニンは血管内皮細胞において一酸化窒素合成酵素の働きで一酸化窒素を産生することで、血管を拡張/血流を改善します。
アルギニンの血液改善効果

参考文献:Maxwell et al. Endothelial Dysfunction in Hypercholesterolemia is Reversed by a Nutritional Product Designed to Enhance Nitric Oxide Activity. Cardiovascular Drugs and Therapy. 2000, vol. 14, no. 3, p. 309–316.

アルギニン+ビタミンCによる
血管拡張

  • アルギニン投与は動脈硬化の患者の大動脈及び細動脈の血管を拡張します。
  • ビタミンCはアルギニンによる血管拡張作用を増強させます。アルギニンとビタミンCは相乗的に働き、血管拡張効果を示します。
アルギニン-ビタミンC併用による血管拡張効果

参考文献:Tousoulis, D. Effects of vitamin C on intracoronary L-arginine dependent coronary vasodilatation in patients with stable angina. Heart. 2005, vol. 91, no. 10, p. 1319–1323.

疲労物質分解促進効果

アミノ酸はエネルギー源などとして代謝されますが、アミノ基(-NH2)を有しているため代謝されるとアンモニア(NH3)が発生します。アンモニアは生体にとって有毒であるため、無毒化する仕組みとして尿素サイクルが存在します。尿素サイクルではアンモニアを代謝していくことで、最終的に無毒な尿素へ変換します。この代謝の過程でアルギニンに変換されるため、アルギニンを摂取することで、尿素サイクルの回転を促進することができると考えられます。その結果、アンモニアの分解を促進させると考えられます。
尿素サイクル
運動後のアンモニア上昇抑制効果

参考文献:Schaefer et al. L-Arginine Reduces Exercise-Induced Increase in Plasma Lactate and Ammonia. International Journal of Sports Medicine. 2002, vol. 23, no. 6, p. 403–407.

血管拡張と運動能力亢進

アルギニン含有サプリメントの摂取で、健常者の自転車運動における持久力の向上が見られました。

試験方法:アルギニン摂取後に自転車運動能力(エルゴメーターを用いた酸素消費の指標(酸素摂取量VO2と、高強度運動の持続時間))を測定。負荷はガス交換閾値:GETの80%である「中強度」と、GET+(VO2Peak-GET)x70%である「高強度」の2種。
●アルギニン摂取量
アルギニンを含むサプリメント(Arkworld社製Ark1 )を運動1時間前に一回(アルギニンとして6g)。
●被験者
19-38歳の男性

参考文献:Bailey et al. Acute L-arginine supplementation reduces the O2 cost of moderate-intensity exercise and enhances high-intensity exercise tolerance.
Journal of Applied Physiology. 2010, vol. 109, no. 5, p. 1394–1403.

免疫賦活効果

免疫細胞の一つにマクロファージという細胞があります。マクロファージは貪食細胞と呼ばれ、ウイルスなど体外から侵入してきた異物を食べて排除します。アルギニンは一酸化窒素(NO)を介してマクロファージ細胞の活動を活発化させます。

アルギニンから生成されるNOは、マクロファージ細胞の活動を活性化させ、体内の免疫力を強化します。

アルギニンによる術後合併症発症率抑制効果
参考文献:Daly et al. Enteral nutrition with supplemental arginine, RNA, and omega-3 fatty acids in patients after operation:
immunologic, metabolic, and clinical outcome. Surgery. 1992, vol. 112, no. 1, p. 56–67.